Bringing a Classic Yacht Back to Life

このクラシックな木造帆船「海の貴婦人 シナーラ」は、英国の大手造船会社によって約10年かけて建造され、1927年に英国サウサンプトン近くの港で進水しました。それから90年もの間、『シナーラ』はその優雅な姿で大西洋、地中海、カリブ海、太平洋の大海原を駆け巡り、セーリングの歴史を刻んできました。私たちリビエラグループは、この美しい帆船が真の「海の貴婦人」としての往年の栄光を再び身にまとうようにと、完全修復(レストア)の作業を進めてまいりました。このプロジェクトにより、『シナーラ』が今後100年の長きに渡って変わりなく活躍できるだけでなく、未来を担うこれからの世代の造船技師、船乗り、そしてヨット愛好家たちにとっての貴重な財産となることを願ってやみません。

Message
from the Chairman

潮風と向き合いながら、船のデッキに立つことでしか味わえない特別な瞬間があると思います。世界的にも稀少なヴィンテージヨットの一つであるシナーラを保存し、風が帆を満たし続けるようにすることを使命としました。

シナーラの修復プロジェクトでは、約1世紀前に進水した当時の材料を約80%使用することができ、造船全盛期の素晴らしい例にもう1世紀以上の息吹を吹き込みました。私たちは、この作品に込められたクラフトマンシップと職人技を正確に記録し、環境・海洋学の教材として活用しています。シナーラ号とその歴史を未来の世代に良い形で残すことは、SDGsと持続可能な社会を目指すリビエラのサステナビリティ・プロジェクトの方針と一致しています。

シナーラは1927年にイギリスで就航し、リビエラに先立って歴代のオーナーに愛されてきました。長い修復作業を経て彼女の姿を見ることができたこと、また、このレベルの修復の専門家がいなかった日本に、世界各国から集まった50人の職人たちが技術を持ち寄り、技術を伝えてくれたことを実感できたことは、非常にありがたいことだと思います。彼らと彼らの貢献なくして成功はありませんでした。プロジェクトを支えてくださった皆様に感謝申し上げます。

 

 

 

 

株式会社リビエラホールディングス
代表取締役会長 兼 社長
渡邊 曻

Cynara’s Origins

『シナーラ』は、戦前に建造された大型クルージングヨットのうち、レストアするまで大規模な修復が施されず、建造当時のまま現存した数少ないものの一つです。このヨットは1927年に誕生し、当時は英国の造船所が帆船の建造と設計の絶頂期にあったことから、その時代の伝統的な技術と創造性の生ける見本と言えるでしょう。このヨットの修復は、建造に携わった人々の仕事と90年以上にわたって続いてきた極上の職人技の証であり、真にやりがいのあるプロジェクトでした。

Cynara‘s Role as a Classic Yacht

『シナーラ』は、クラシックヨット(建造から50年以上を経た帆船)の中でもヴィンテージヨット(建造から約100年近くを経てなおかつ完成度の高い帆船)に分類される船です。クラシックヨットは、歴史上の1つの時代を象徴する重要な文化財です。また、ヨットの耐久性と頑丈性を考えて建造されるとともに、最高水準のシーマンシップに従って、忠実なブリストル様式に則り整備されていました。デザインと造船技術の優美さは構造のどこを見てもあきらかで、大きな木材部品から小さな釘にいたるまで、完璧に仕上げられています。完成時には完全に目に触れない内部の部分にさえ、職人たちは自らの技術に大きな誇りをもって造られていました。こうした建造当時の造船技師たちによる献身的努力と細部へのこだわりは、この度のレストアの時を迎えて初めて分かることです。オーナーもクルーもこのヨットを大切にし、保存するためにたゆまぬ努力を続けてきたからこそレストアするまで現存させることができたのです。

その美しさを高く評価すると同時に、未来の時代にも、この素晴らしいクラシックヨットの魅力を伝えていきたいと考えています。

過去の造船業者が示した細部へのこだわりと注意は、過去30年間に報われてきました。これらのヨットの所有者や乗組員は、その美しさを鑑賞し、楽しむために、また次世代の人々にも理解してもらうために、これらのヨットを救助、保存、修復するために多大な努力をしてきました。

 

Cynara’s Design

『シナーラ』は、20世紀前半屈指の有名ヨットデザイナーであるチャールズ・ニコルソン氏によって、補助エンジン付きケッチ型ヨットとして設計されました。ニコルソン氏はレーシング用とクルージング用の両方のヨットの設計を手がけており、『シナーラ』の設計にあたっては、浅い入り江に入港して海岸線近くで停泊できるように喫水を比較的浅くした、高速クルージングヨットと位置づけていました。

 

チャールズ・ニコルソン氏は、素早く効率的に帆走できるうえに安全で耐航性のある船を設計することで定評があり、『シナーラ』は喫水が浅いにもかかわらず、彼が創り出した中で最も耐航性のあるヨットです。『シナーラ』が高いスピードを誇り、たとえ荒れた天候のもとでも遠洋航海を成し遂げられるすばらしい船であることは歴史によって証明されています。

また、キャンパー・アンド・ニコルソンズ造船所による華麗な内装は、建造当時100年前の使い方に合わせて設計されたものです。当時はまだ空調設備が存在しなかったために、ヨット愛好家たちが船室(キャビン)で過ごすことはまれで、大きな天幕を張った甲板(デッキ)上にいることを好みました。設計者たちはヨット愛好家が求めるものと、太陽、風、日陰との関係の両方を深く理解し、そうした自然の要素を効果的に利用して最も快適な状況を生み出す方法を知っていました。そのため、ヨットの各部がどのように設計されているかを精査することで、私たちは今もなお歴史や多様な文化や生活様式など、数多くの学びを得ることができます。彼らの設計の背後にある考え方を理解したときにはじめて、そのデザインのコンセプトに秘められた知性を垣間見ることができるのです。

Cynara’s Restoration Materials

The  Hull

船体(ハル)はヨットの要となる骨組みと表皮で、竜骨(キール)、肋骨(フレーム)、外板(プランク)、梁(ビーム)によって構成されています。『シナーラ』の船体の肋骨は乾燥させたホワイトオーク材で、そのほとんどを英国から大量に取り寄せ、交換しなければなりませんでした。木材は使用前によく乾燥させて、水分を十分に取り除く必要があり、とても時間のかかる作業となりました。肋骨の外側に外板を張り詰めて、船体に水が入らないようにします。『シナーラ』では外板としてビルマチーク材を使用しており、この木材は年々稀少になっていますが、幸いオリジナルの外板のほとんどがまだ使用できる状態で、交換の必要があったものはごくわずかでした。

The Deck

デッキはクルーとゲストの大半が一日を過ごす場所です。ヨットの係留時や停泊時にはデッキに天幕が張られ、ゲストのためのテーブルと椅子が用意されます。メインマストより前方部分はクルーのための場所となり、オーナーとゲストは後方で過ごします。航行中には天幕が取り外されて、デッキ全体が帆走のために利用されます。『シナーラ』のデッキの張り板はチーク材で、全面的な張り替えが行われましたが、今回の修復では、その前に船舶用合板のサブデッキを追加することによって、強度と防水性をさらに高めることができました。デッキ用家具もニス塗装を施したチーク材で修復され、すべての金具類は塗装されたスチール製またはブロンズ製で作られています。

The Interior

クラシックヨットでは伝統的な造りとして、クルーの寝室は船首部分にあり、主船室とは壁で隔てられていました。オーナーとゲストのための設備は、当然のことながらより豪華でエレガントなもので、この船室部分にはオーナーの好みに合わせた家具を贅沢に設え、費用を惜しむことは一切ありませんでした。『シナーラ』の内装はほぼ建造当時のまま残されており、できる限り元通りの素材とデザインを残しながら、緻密な修復作業が進められました。内装の大半はマホガニー材です。この素材は豊かな色合いと質感から伝統的にチーク材より高級な木材とされ、安定した性質をもつことから内装の建具類によく使われてきました。重厚感のあるマホガニー材のところどころに、白の塗装を施したパイン材がちりばめられています。キャビネットと食器棚には通例に従ってシダー材を用いており、この木材は衣類の防臭効果をもつとともに、天然の防虫剤の役割も果たします。船室の床はオーク材とチーク材、接続金具とスイッチ類はすべてニッケルメッキを施した真鍮製です。

The Mast

マストには強度と弾力性を兼ね備えたコロンビア産のパイン材とスプルース材(トウヒ)を用いることが伝統とされ、『シナーラ』の修復でもこの伝統に従っています。スプルース材は航空機の翼にも利用されている素材で、ブームとガフ(帆やマストを支える支柱)にも用いられ、最も大きな力を受けるスパー類(マストやブームなどの円材)を軽くする役割を果たしています。

The Rigging

『シナーラ』の艤装(フィッティング)はブロンズおよびステンレス製です。ワイヤーロープは、7本撚りのワイヤーをさらに7本撚り合わせる伝統的な手法で作られたもので、ワイヤーロープ全体に強度と柔軟性を確保しています。ワイヤーロープに用いる異種の金属間でガルバニック腐食(異種金属接触腐食)が起きないようにすることが重要で、その点でブロンズとステンレスは適切な組み合わせになっています。帆に過度の力がかかったとき、索具は全体で1つの大きなショックアブソーバーの役割を果たし、力が船体に達する前に、収縮することによってそれを消散させることができます。

The Sails

『シナーラ』の帆の素材はダクロンで、この素材にかかる力を最小限に抑えるために、帆を革で縁どって補強する伝統的な手法を用いています。新装の帆はすぐれた耐久性をもち、メンテナンスと修理も容易になりました。

The Engine Room

ヨットが問題なくその機能を果たすためには、むだなく配置され、よく整備された機関室が欠かせません。『シナーラ』の機関室の重要な設備は砲金(ガンメタル)やブロンズなどの素材で作られており、長年にわたってメンテナンスフリーで利用することが可能です。もちろん定期的に検査と保守を行えるよう、どの部分でもすぐ確認できる状態になっていることが大切です。燃料系統はステンレス製に統一しています。

Restoration by RIVIERA GROUP

Restoration photos by Yoichi Yabe & RIVIERA GROUP

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